【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
頭の中、何も考えられない。
ぼーっとするし、まるで夢の中にでもいるみたい。
「……で。
人には言わせといて自分は言わないの?」
ようやく長いキスを終えて、隣に寝転んだ越に頭を撫でられながら、目を閉じる。
あったかくて、このままゆっくり眠れそう。
「ん……なにを?」
「好きだって」
「……越、すき」
あ、やばい……落ちそう。
越と出会った時点で既に夜中の2時だったから、きっとすぐそこにもう朝が見えていて。色んなことがあったから起きていられたけど、ベッドに入ってしまったら、限界がきた。
「付き合う?
……、って、まさかこのタイミングで寝た?」
「………」
「ああ、も……
振り回されるのが嫌いなんだよ俺は」
「………」
「おやすみ、雫」
今夜はきっと、とくべつ幸せな夢を見られる。
だってとっても特別な日だったから。
絶対に、忘れることはない。
わたしたちの、はじまりの日の記憶。