【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「はじめましてぇ。
中津 ハルだよぉ。あんまり仲良くなれる気がしないけどぉ、まぁよろしくぅ」
「遥人、でしょ」
「ハル! ハルって言ってるでしょぉ!?
なんでえっちゃんイジワルするのぉ!?」
「ちゃんと本名教えとかないと後々面倒じゃん」
仲良くなれそうにないというややこしい一言はひとまず置いといて。遥人……ということは、やっぱりハルちゃんって男の人?
背も声も可愛らしいけれど、どうにも節々で違和感があるのはそのせいか。
「むぅ……
ハルって呼んでくれなきゃへんじしないもん」
ぷいっと、拗ねたように顔を背けるハルちゃん。
可愛くない?え、女のわたしよりも圧倒的に可愛くない?長いそのまつ毛も、マスカラ塗ってるよね?
「俺は米田 兼。
そっちが生田 静。俺ら全員、朝顔の幹部候補生だよ」
そして、ピンク髪の彼が兼くん。
わたしたちの一通りのやり取りに、一言も挟むことなくずっと見ているだけだった彼が、静くん。クールで落ち着いたその姿は名前にぴったりだ。兼くんの紹介と共に、静くんも目だけは合わせてくれた。
越とは違う、青みがかったグレーっぽい髪。
……人のこと言えないけど、この人たちみんな、髪色って校則的に大丈夫なんだろうか。
いや、人のこと言えないんだけど。
「昨日言うてた残りの幹部候補3人がコイツらやな。
悪いヤツやないし、まあ仲良ぉしたってや」
「ちょっとぉ。
なんで鼓がぼくらのこと仕切ってんのぉ?」
「だってハルと兼に任せたら永遠に進まへんやろ?
越なんかもう完全に飽きて欠伸しとるやん」