【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
ほんとだ。
眠そう。……そういえば越って昨日いつ寝たんだろう。わたしが先に寝ちゃったし、朝も越に起こしてもらっちゃったし。
「もしかして、眠れなかったの?」
くるりと、みんなに背を向けるようにして越を振り返る。
そんな、何気ない仕草だったのだけれど。
「っちょい待て!」
鼓が大きな声を上げるから、思わず動きが止まる。
びっくりした。……なに?急に。
「ちょ、お前ほんまに手出したんとちゃうの?
雫ちゃんのその後ろ首んとこ、キスマークやろ?」
え。……え!?
「さっきまで前向いとったから気づかんかったわ。
しかも結構ハデにつけて……何しとんの」
キスマークって何。
そんなところに触れられた記憶なんて、ないんだけど……!?
「雫ちゃん、これこれぇ」
慌てて首後ろを手で押さえるわたしと、いつの間にやらスマホでそれを撮っていたらしいハルちゃん。
見せてもらえば確かに、わたしの首後ろにはハッキリと紅い……いや、もはや赤紫色の痕が残っていて。
「っ、いつの間に、」
「さあ?」
絶対寝てる間に付けたわよね!?
家を出る前、「髪結んだら?」なんて越が言うものだから、なんにも気づかずにポニーテールにして髪を上げてしまっていた。