【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
越と出会って、1週間。
彼と出会った繁華街は家からそう遠くない場所で、「別にウチにいてもいいけど」と言われたけど、毎日夜には大人しく帰ることにした。
だって、昼間は朝顔のみんながいてくれるし。
携帯を持っていなくて連絡を取れないわたしは、毎日自分の足で朝顔の倉庫へ出向く。
越だって暇じゃないから、ずっと連絡の取れないわたしに付き合わせるわけにもいかない。
というわけで、今日も朝から朝顔の倉庫に来ているけれど。
「おはよぉ、雫ちゃん……あさはやいね?」
「ハルちゃんおはよう。まだ眠そうね」
「んぅ……
昨日の夜メイク動画見てたら寝落ちしちゃったぁ」
ねむそうにまぶたを擦るハルちゃん。
今日も抱きしめたくなるほど可愛い。
「わぁっ、なぁに、雫ちゃん」
「ハルちゃん可愛いなと思って」
「えへへ」
我慢できずに抱きしめたら、ハルちゃんは嬉しそうに笑う。
数日一緒にいて分かったことだけれど、ハルちゃんは"可愛い"と褒められることに弱い。本当に女の子みたいなその性格に、もはや男女の壁なんてものは感じてない。
「雫ちゃんとハル、すっかり仲良しだね」
「おはようございます、東さん」
「おはよう。
あんまり仲良くしてると越が嫉妬するよ」