【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
2階からおりてきた東さんの言葉に、じんわり顔が熱くなる。
越はまだ来ていないみたいでこの場にいないけれど、定期的にみんな、わたしと越のことを揶揄ってくる。
なんでも、越に彼女ができるなんて、ってことらしい。
おかげでほかの6代目幹部にも揶揄われるし。
「別にいいよぉ。
ハルと雫ちゃんは仲良しだもん」
ニコニコ笑うその姿は、完全に朝顔のアイドル。
ねー?と言われて頷いていたら、「何してんの」と冷たい声が頭上から降ってきた。
「あー。誰かと思えば噂のえっちゃんだぁ」
「人の彼女に何してんの、遥人」
「ハルって呼べって言ってんじゃん!?」
あ、ハルちゃんの可愛い笑顔が。
毎度変わらず掴みかかるような勢いに思わず笑いつつ、越に「おはよう」を言うと、彼はハルちゃんのことなんて見えてないみたいにスルーして。
「おはよう。朝早くから来てんね」
「うん。だってみんなに会いたくて」
「そこは俺じゃないんだ」
「……? 何が?」
「……いーよ別に。
そこまで雫に期待してないよ俺は」
なんか失礼なこと言われてる。
ハルちゃんもハルちゃんで、「あーあ」みたいな顔してるし。