【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「なんや、朝から賑やかやなぁ。
雫ちゃんもう来てたん? おはようさん」
「おはよう、鼓。
そういうみんなも来るの早いわね」
「そりゃあなあ。
俺らだけやったら別に何もないけど、雫ちゃんおると倉庫ん中明るいし、来たくもなるもんやで」
「うわぁ、鼓がなんか口説いてるぅ」
「口説いてへんわ……!」
どちらかといえば、この場が明るいのはハルちゃんや鼓、普段から来るのが遅い兼の3人のおかげな気がするけれど。
本当にそんな風に思ってもらえてるのなら、すごく嬉しい。
どうしてあの日、わたしが越と出会ったあの場所にいたのか。
誰も聞いてこないし、何も触れられない。
だからこそ余計に心地よくて。
ここに居させてもらえることが、幸せで。
「雫」
「うん?」
「好きなだけここにいたらいいと思うよ」
心の中を読んだみたいな越の言葉に、笑う。
うん、しあわせ。紛れもなく、しあわせ。
「そうする。好きなだけいるんだから」
誰にも邪魔されない。
わたしだけの、特別な、居場所。