【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
不意に思ったことを、聞いてみる。
ちなみに、聞かなくても越とハルちゃんはそのままだろうなと思ったけれど、全員染めることはしないらしい。
「んぅ? 雫ちゃん髪黒くするのぉ?」
「うん……休み終わっちゃうし」
「なんでぇ?
めちゃくちゃ綺麗に色抜けてるよぉ?」
「そういうの厳しいのよ、ウチのとこ」
元々、夏休みの間だけと決めて黒かった地毛を、美容室で綺麗と言ってもらえるほどの金髪にまで仕上げてもらった。
けれどわたしには、この髪色のまま元通りの生活を送る勇気はない。
自分で黒染めしちゃうと、次にまた明るくしたくなる時困るかもって美容室で言われちゃったから。
そこは美容師さんにお願いして、元の色に戻してもらうつもりだけど。
「長期休みの度に明るくするつもり?」
倉庫内の冷蔵庫から、炭酸水のペットボトルを1本持ってきた越。
そのキャップを開ける姿だけでも、CMみたいな美しさを誇る。
「ううん、もうしばらく暗いままだと思う」
「そ? 今回はじめて色抜いたんでしょ?
鼓とは比べ物にならないぐらい綺麗な色してんのに」
さらりと、越の手がわたしの髪に触れる。
指を通すようにして撫でられて、それだけで呼吸が上擦りそうになる。
「雫」
目をわざと逸らしたっていうのに、名前を呼ばれて呼び戻された。
どうせ顔が熱くなるのは分かっていて、目を合わせれば、やっぱり顔が熱くなって。