【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「……なんでそんな可愛い顔になるかな」
「な、にが、」
「ん? 毎回物欲しそうな顔で俺のこと見るねって」
そんな顔してない……と、言いたいところだけど。
抱きしめてくれるのもキスしてくれるのもふたりきりの時だけ。倉庫にいる時間が長くて、ふたりきりの時間なんて、越が家まで送ってくれるその時だけ。
「そうだって言ったら?」
「……あんまり男を煽るもんじゃないよ、雫」
越のくちびるが、額に触れる。
それから、何も無かったみたいに炭酸水に口をつける彼。
「ああ、そうだ。雫ちょっと」
「うん?」
「こっち耳貸して」
なんだろう。
思い出したように言われたから、何かあったっけ?と越の口元に耳を寄せる。
「そんなにしたいなら。
あとでふたりきりの時に、たっぷりシてあげる」
「っ……!」
わたしがこの人に、勝てるはずもない。
真っ赤になるわたしを見て口角を上げる姿もやっぱり美しくて、「ばか」と言い返すことしか出来なかった。