【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「髪色もどす前に。
……いちばんイケないこと、しとく?」
「っ……」
なにそれ、なんて、聞くまでもない。
恥ずかしくなって顔が熱くなるけれど、出会ったあの日みたいにやっぱり嫌だと思うことは無かった。さすがに早すぎ?って思わなくもないけど、それでも。
「……うん」
越の黒いTシャツの裾。
それを、鼓動のはやさを誤魔化すように握る。
「……ほんとうに?
俺いま、結構無茶なこと言ってると思ってるよ」
誰にも教えてあげる気はないけれど、越はわたしに優しい。
顔を覗き込まれて、目も合わせられないまま頷く。
「……、雫の部屋、どこ?」
越でさえ、玄関にしか入ったことの無い我が家。
甘い囁きに言葉を返せないまま、靴を脱いで家の中に上がる。それから彼を自室に連れていくと、念を押すように「本当にいいの?」と訊ねられた。
「強要されたって思ってない?
ほんとは嫌だったとか、あとで言っても遅いよ」
「大丈夫。そんなこと思ってないから」
不思議と、そんなに怖くない。
それでも無意識のうちに、すこし指先が震えたけど。
「……好きだよ、雫」
どうしようもなく、わたしは越に愛されてたい。