【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-







「うう……

さみしいよぉ。たまには帰ってきてねぇ」



中学3年、3月。

東さんは後任である7代目の幹部に彼らを指名し、トップを越に譲った。そしてわたしは正式に朝顔の姫の座につき、南への旅立ちの日。



ハルちゃんは瞳にいっぱい涙をためて、わたしに抱きついてくる。

そんなハルちゃんを、あきれたように見下ろしている越。



「二度と会えなくなるわけじゃないんだから」



「でもなのぉ……!

毎日いっしょだったんだからさみしいんだよぉっ」



「ハルちゃん、これからは連絡できるから大丈夫よ」



さらさらのミルクティーヘアを撫でる。

ひらっと新しく購入したスマホを振るわたしに、ハルちゃんは嬉しそうにうなずいてくれた。




「しょうもないことでバレるなんて勘弁だから。

俺らの名前は絶対分からないように登録しておいてよ」



購入した翌日に、越にそう言われて。

いちばん連絡を取り合う越は兄として登録することを決め、ほかのメンバーもそれぞれ画面の表示だけでは分からないようにしておいた。



ハルちゃんだけは、『ハルちゃん』で登録してるけど。



「そう簡単に事が進むわけじゃねえだろうし……

雫ちゃん、自分の身が危険だったら迷わず帰って来いよな?」



「ほんまにやで。

上手くやらなあかんって思うのも大事やけど、自分のこと一番大事にしぃや」



兼と鼓に心配されて、「うん」とうなずく。

話が出た時から、わたしよりもわたしのことを心配してくれているふたり。その優しさだけで、頑張ろうって思える。



「……雫」



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