【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



「っ、」



──ハッ、と意識が浮上する。

決して眠っていたわけではないのだけれど、あまり大きく肩が揺れなかったことにほっとしながら、頭で現実を均した。



『では次に、新入生代表挨拶』



美山高等学校、入学式。

日程は同じだと聞いたから、今頃きっと、灰高でも同じように入学式が執り行われていることだろう。……まあ、向こうは治安が悪いようだし。



『新入生代表、舘宮 まつり』



こっちほど"普通"の入学式なんて出来てないかも、と。

ひとり考えていたら、聞き覚えのある名前に顔を上げる。



新入生代表が立ち上がった瞬間、色めく女の子たち。

それもそのはず。




越は圧倒的な美を誇るけれど、それとはまた違う、美しさ。

綺麗すぎる顔は無表情で何を考えているのかわからないけれど、それが余計に美しさへ拍車をかける。



舘宮、まつり。

……彼岸花の、7代目トップ。



穴があきそうなほどの視線を集めても、彼は顔色一つ変えないままで。

壇上に上がり、淡々と挨拶をこなし、その後席へともどった。



……新入生代表ってことは、今年度で主席だったってことよね?

越もそうだったけど、やっぱり総長って頭が良くないと務まらなかったりするんだろうか。



ちなみに灰高の新入生代表挨拶は、越ではなく静らしいけど。



……っていうか。

ここからどうやって、お近づきになれるだろうか。



「しかも違うクラス……」



< 56 / 295 >

この作品をシェア

pagetop