【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「しずくん、寒くない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう咲ちゃん」
腕に抱きついてくる小動物の頭を撫でる。
そうすればニコニコ笑ってくれる咲ちゃん。やわらかなマロン色のボブヘアは、余計に咲ちゃんの可愛さに拍車を掛けていると思う。あとその笑顔も。
「最近肌寒くなってきたよね」
「稜くん寒いの苦手?」
「うーん。苦手だけど、暑いのよりはいいかな」
ああ、確かに夏は結構しんどそうだった。
毎日どことなく疲れてそうで、夏バテというか。
「ぼく冬の方が好き!」
「あら、そうなの?」
「うんっ、だってイベント多いでしょー?
クリスマスとかぁ、年越しとかぁ、お正月にバレンタインに……」
「咲耶の頭の中ってほんとに食べ物で占めてるんだなぁってよく分かるラインナップだよね」
「ふふっ、
ちょうど今頃から食べ物が美味しい季節だもんね」
食欲の秋って言葉があるくらいだし。
しかも咲ちゃんはすごく美味しそうにご飯を食べるから、見ててしあわせな気持ちになる。
「さてと、好きなもの買っていいよ。
普段ならダメって言うとこだけど、臨時収入があったから今日は特別ね」