【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「まさか、初対面でわたしのこと好きだなんて言わないでしょ?」
「そのまさかだって言ったら?」
「それこそ"まさか"じゃない」
雰囲気がチャラいと言われることは今までにもあったから、少なからず俺の女関係のだらしなさを察しているらしい。
時計に一度目をやった彼女は、時間を気にしているのかそのまま俺を置いて歩き出した。
「かわいいと思ってるのは本当だよ」
逃がすまいと、それを追い掛ける。
ほかの女の子たちからの熱視線をもらうけど、ごめん今俺ちょっと忙しい。
俺の言葉なんて、まるで響いていない様子で。
「それはありがとう」なんて笑うから、どうしようもなく振り向かせたくなった。
「で、俺の遊び相手になってくんない?」
ぴたり。
彼女が足を止めて、後ろの俺を振り返る。
……そうそう。
そうやって、振り向かせてえのよ。この言葉以外で。
「わたしの話聞いてた?」
「だって遠回しに言っても振り向かねえじゃん?」
「ストレートに言われたって同じよ」
俺どころか、俺以外の彼岸花の幹部にもまるで興味がなさそうな彼女。
美高ではめずらしいんだよ、正直。