【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「雫ちゃん、なんでココの学校入ったの?」
「あなたに関係ある?」
「あるよ。だってこの学校の女子生徒のほとんどが、彼岸花の噂を聞きつけて入学する。
それなのに、雫ちゃん俺らに興味ないでしょ?」
歴代の彼岸花幹部がここに入学していることから、7代目である俺らがここに入学することを予想するのは容易い。
そして7代目は、彼岸花で歴代最強の美形が、トップを張ってる。
さすがにまだ、入学2日目で、無鉄砲に声を掛けてくる女の子はいねえみたいだけど。
舘宮 まつりの彼女になりたいオンナノコが、この学校にはあふれてる。
「……"彼岸花"?」
雫ちゃんが。
その名を口にして、不思議そうに首を傾げる。
「なぁに? それ」
「……え?」
「ああ、そうそう。わたし春休みに、このあたりに引っ越してきたの。
元々引越しの多い家庭育ちで、このあたりのこと、わたしほとんど知らなくて」
彼岸花って何?と。
もう一度同じことを訊ねてくる彼女に、目を見張る。
……え、まじ?
この子、俺らのこと何にも知らねえまま、美高入ったの?
「あ、もうチャイム鳴るから教室行かなきゃ」
ごめんね、と。
散々呼び止めたのは俺なのに、なぜか謝った彼女が階段を駆け上っていく。踊り場で折り返した彼女のスカートの裾がひらりと舞うのを見つめながら、俺はその場に立ち尽くしていた。