【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



「……なあ、快斗。

信じらんねえ話聞いてくれる?」



「あ?

俺はお前が朝っぱらから学校にいるのが信じらんねーよ」



美山高校、旧図書室。

古びた埃の匂いがするその部屋は、歴代の彼岸花幹部が入り浸る部屋として使っているらしい。……まあ要するに、サボり部屋?



細く開けた窓の外に紫煙を流している快斗は、けだるそうに俺を見る。

いくら俺でも、入学2日目に学校ん中でサボって喫煙するだけの勇気はねえからすげえよ。



バレたら軽く停学喰らうんじゃねえの? それ。



「昨日俺が声掛けてた子、いるじゃん?」



まつりと稜介は本当に真面目だから、しっかり教室で教師の言うことを聞いている頃だろう。

咲耶に関しては、今日はまだ姿を見てない。どうせ寝坊だから、放っとくけど。




「……あの子、俺らのこと知らなかったんだけど」



「は?」



「だから。

彼岸花ってなに?って、言われた」



念のため、地方から引っ越してきたらしいという話も一緒に伝えておく。

それを聞き終えた快斗は、「ンなヤツいるんだな」とケラケラ笑った。



「確かに、昨日俺らのこと見ても無反応だったしなー」



「俺びっくりして逃がしちゃったわ」



「おーおー。百戦錬磨の優理はどこ行ったよ」



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