【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
俺らへの食いつきが悪かったのも、彼岸花の存在を知らないせいかもしれない。
とりあえず彼女に彼岸花のことを教えてあげようと思っていれば、タバコを揉み消した快斗が不敵に口角を上げた。
「ソイツ、2限目拉致ってこね?」
「……、」
そうだ。
コイツ、予測できない楽しいこと大好きなんだったわ。
「2限目ってサボれる感じの内容だったっけ?」
「大丈夫だろ、俺ら1限からサボってるし」
たぶん、そういう問題じゃないと思うんだけどねえ。
俺らは良くても、雫ちゃんが納得いかないんじゃねえの?なんて心配は、もうその気になっている快斗に届くわけもなく。
「……え、なに?」
1限目と2限目の合間。
3組に顔を出して、ツカツカ彼女の席の前に向かった快斗を見て、雫ちゃんが顔を引きつらせる。
「オメー、俺らのこと知らねーんだって?」
「は、い?」
「優理が、彼岸花ってなんだって聞かれたって」
教室内の視線を一身に集めても、快斗の興味は雫ちゃんから逸れない。
その間、俺はギャラリーの女の子たちに、ひらひらと手を振っておく。うん、結構かわいい子多いなぁ、この学校。
「そんなオメーに朗報だ。
俺ら彼岸花が、直々に教えてやるよ」