【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
別に、何が悪いとかじゃないのに。
まわりがその引き立て役なんじゃないかと思ってしまうくらい、雫ちゃんが圧倒的に美人だった。
「っ、ちょっと、なに……!?」
快斗の手が、雫ちゃんの腕を掴む。
おいおい快斗、世間ではそれをセクハラっていうんだよ~。
「俺らがみっちり教えてやるって言ってんだよ。
大人しく着いてきたら、すぐに済む話だろ?」
「そ、んなこと言われても、」
彼女の瞳が、困ったように揺れる。
これ以上困らせたら泣いてしまいそうな気がしたから、彼女の腕を掴んでいる快斗の腕をぽんぽんと叩く。
そうすれば快斗が、一度手を離した。
オンナノコに乱暴しちゃだめなんだよ、快斗くん。
「怖がらせてごめんな。
彼岸花のこと説明しようと思うんだけど、2限目だけ付き合ってくれねえ?」
「え? でも、2限目って学年集会、」
「まあまあ、気になさらず。
痛いことも怖いこともしねえから、一緒に行こ?」
にこりと笑って、彼女に手を差し伸べる。
そうすれば教室中の視線が自分に向いていることを自覚したようで、雫ちゃんは俺と快斗を視線で2度往復してから、その手を取った。
「ん、いい子いい子。よし、行くぞ~」
席を立った彼女を連れて、3人で教室を出る。
それと同時に入ってきた教師に、「君たち」とお咎めの声を掛けられたけど。
「ごめんセンセー、こっち急用だわ~」