【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
ひらひら。
手を振って、先生があっけにとられている間に、足を進めた。おそらくこのあと彼女が言っていた学年集会が行われるだろうが、俺らは堂々とサボらせてもらう。
「ね、ねえ。本当に大丈夫なの?」
「ん~?」
つんつんと。
手を引っ張られて、雫ちゃんとまだ手を繋いだままだったことに気づく。っていうか動作が可愛いな。
「わたし怒られるの嫌なんだけど……」
「その時は隣のこわーいヤンキーが責任取ってくれるよ~」
「誰がヤンキーだ」
あ、責任は取ってくれんのな。
あと、燃え盛る炎みたいな真っ赤な髪をしておきながら「ヤンキーじゃない」はたぶん無理あると思う。めちゃめちゃにヤンキーだろ。
「んじゃ、その辺の椅子とかテキトーに座れ。
悪いが茶とかは出してやれねーから許せよ」
拉致完了。
2階にある旧図書室にもどってくるなり、快斗が雫ちゃんにそう言う。
使いこなしてんな。
俺らもこの部屋入ったの、今日が初めてだってのに。
「………」
雫ちゃんも雫ちゃんで、歯向かうことはあきらめたらしい。
背もたれのある椅子を言われた通り引き寄せて腰掛けた彼女は、不安そうな目のまま俺と快斗を見る。
……ガードのカタい強気な様子もいいけど、不安そうな表情も悪くねえな。