【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「言い忘れてたな。
俺は八雲 快斗。こっちの優理はもう言わなくても知ってるだろーから割愛するぞ。ンで、俺らは彼岸花っつー暴走族の幹部」
「……暴走族」
「そ、暴走族。
関東だとデカいチームが南北で別れてて、彼岸花は南側だな」
ちなみに北側は朝顔、と。
補足すれば、彼女は「なるほど」と頷く。理解が早いね、お嬢さん。
「そんで、俺らは彼岸花の7代目。
トップはまつり……昨日入学式で代表挨拶してた黒髪のヤツで、まあ、この美高に通う女のほとんどはまつり目当てって言ってもおかしくない」
「……まあ確かに、モテそうだったわね」
まつりの顔を見て、思い出せない女は早々いない。
それくらい綺麗に整った顔を見ても、「モテそう」で済ませられる雫ちゃんがすげえよ。俺らに興味なさすぎだろ。
「そんなわけだから、優理がオメーに興味津々なんだよ。
……まーコイツ女ったらしだから、それだけじゃねーけど」
「うん、だってずっと軽そうだし」
「え、ひどくね?」
「でも軽いのはほんとでしょ?」
いや、うん。
それに関しては否定できねえんだけどさ。え、俺ら昨日初対面だよね?
「っ、くく、優理に言葉で勝てる女もいるんだな」
呑気に笑ってんじゃねえよ、バ快斗。