【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
お礼を言ってから、咲ちゃんの元に駆け寄る。
すでにカゴの中にはスナック菓子がぱんっぱんに詰められていて、思わず笑ってしまった。
「しずくん、これどっちたべるー?」
「んー……こっちかな」
「じゃあこっちにするー!
稜くん、まだほかにも買っていいー?」
「いいよ。
俺は残り3人が好きそうなフライヤー見てくるね」
「しずくんデザート選ぼっ」
くいくいと腕を引かれて、咲ちゃんとスイーツコーナーへ。
生クリームがたっぷり乗ったスイーツを目の前に、咲ちゃんの表情がさっきよりも輝いてる。
「どれにする? 咲ちゃん」
「ぜんぶ!……は、さすがに怒られちゃうからぁ」
じっくり選んでる咲ちゃん。
その隣で、『大人のティラミス』と書かれた商品を、咲ちゃんの持つ2個目のカゴに入れるわたし。
それから、様子を見に戻ってきた稜くんに、「晩ごはんってどうするの?」と首を傾げる。
放課後にたまり場に来ると、必然的に時間が遅くなるから、ご飯も一緒に食べることが多い。
けれど今日は、何の話もしてないし。
どうするんだろうと聞いてみれば、稜くんが買って帰ろうかと言ってくれる。
……性格バラバラなメンツが集まってるのって、絶対に稜くんのおかげだと思うの。
みんな協調性がないものだから、稜くんの存在は本当にありがたい。
わたしはひとりっ子だけど、まるでお兄ちゃんみたいで。
こんなお兄ちゃんがいてくれたら嬉しかっただろうなって思う。