【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
・お姫様不在 side朝顔
◆ side兼
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「………」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
「遥人、うるさい」
「だからハルだって言ってんじゃん!?」
灰高、第2音楽室。
入学2日目、昼休み。キャンキャンと小型犬のように高い声で喚き散らしているハルは、相当機嫌が悪いようで越に噛み付く。
……が、俺らの総長サマは、涼しい顔でもう一度「うるさい」と言っただけだった。
ハルが不機嫌な理由は、始めからわかってる。
「雫ちゃんが恋しいよぅ……」
初対面の時はあんなに突っかかっていたのに。
今ではすっかり仲良しで大好きな雫ちゃんが、この場にいないから。この場というか、南にいるしなぁ。
「メッセージかえってこないぃぃぃ。
なんで!? 美高もいまお昼のはずじゃんかぁ!」
「ああ、返ってきてないの。残念だったね。
俺にはさっき雫からメッセージ来てたけど」
「はぁ!?」
ああ……またハルを煽るようなこと言って。
ハルが感情的で反応が面白いから、時々越はハルで遊び始めることがある。今がそう。
「なんでぇ?
うう……追いメッセージするもん……」