【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
荒ぶってんなぁ、ハル。
そりゃまあ、毎日一緒にいたから、俺らも寂しいけど。こうなった原因の張本人は、なんでもないような顔してるし。
「越は寂しくねーの?」
なんだかんだで、雫ちゃんを大事にしてることは知ってる。
表に出したくないみたいだし、怒らせたくないからわざわざ言わないけど、俺らが思ってるより雫ちゃんのこと好きだよな?
「別に。俺が行かせたんだし」
「そうだけど。頻繁には会えなくなるじゃん」
「……大して何も変わんないよ」
俺には、結構気にしてるように見える。
彼女がいない俺が言うのもなんだけど、ほかの男のとこに彼女が行ってて、しかもハニートラップ仕掛けるなんて不安だらけじゃね?
「うー……
『たまには帰るから待ってて』……だってぇ」
「ほんま優しいな、雫ちゃん。
俺が雫ちゃんと同じ立場やったら、チームにこんな振り回されんの絶対嫌やわ」
「鼓の話は聞いてないもんねぇだっ」
前向きな返答な来たからか、ハルがちょっと落ち着いてる。
さっきよりも言葉の棘がなくなってる。
「舘宮が動くかなぁ」
ぽつり。
俺のつぶやきを拾ったらしい越が、こっちに視線を向けてくる。それから、綺麗に口角を上げたかと思うと。
「動くよ、絶対。
俺らの姫、誰の女だと思ってんの?」