【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
確かに、教室に居づらいのは事実。
かといって優理が迎えに来るとなると、また変な噂が立つのは分かりきってる。そしてこの男は、迎えに来ると言ったら絶対に来る。それは阻止しないと。
ランチセットが入ったバッグを手に、教室を出る。
この学校、校則がゆるくて金髪や赤髪が許されているのもそうだけど、比較的色んな部分で自由だ。
「あ、そうだ」
旧図書室までの道のりで、メッセージから『兄』を引っ張ってくると、『今から彼岸花の幹部とお昼食べるわ』と越に伝える。
ハルちゃんからも『雫ちゃん』『寂しい』と連絡が来てるけど、返したら長そうだから後にしよう。
広い校舎の中、2限目に通った場所を思い出しながらその部屋にたどり着く。
コンコンとドアをノックしたら、すぐに扉が開いて、ひょこっと柳くんが顔を覗かせた。
「どうぞーっ」
にこにこにこにこ。
……見てるだけで癒される。
「ありがとう、柳くん」
「うん? 咲耶でいいよー?」
「咲耶く……、咲ちゃん?」
ところどころ、言動がハルちゃんと被る。
咲耶くんよりもそっちの方が似合う、と勝手に言い替えたけれど、咲ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
「覚えんの早ぇな~。
快斗なんか、まだここまでの道のり分かんねえのに」
「うるせー、方向音痴なんだよ俺は」
対称的な、青と赤。
それだけでも、随分と賑やかなのに。