【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



「いらっしゃい雫ちゃん。

ごめんね、お昼食べるにはちょっと埃っぽいかもしれないけど。一応換気はしてるから」



「ううん、大丈夫よ。ありがとう」



井瀬谷くんにも優しく歓迎されて、思わず笑みを漏らす。

……幹部との接近、こんなに上手くいってて良いのかしら。



しかも今のところ、わたしから動いたことはほとんど無い。

優理が声を掛けてくれたおかげで、事がとんとん拍子に進んでる。



「こっちおいで~」



優理に呼ばれて、その隣の空いた席へと足を向ける。

旧図書室ということもあって、室内にあるのは大きな机とそれを囲む椅子が複数。



ひとつの机で6人は座れるけど、せっかくこの広さがあるんだから、そのスペースを有効活用しているようで。

2台の机で、各々好きなところに座っている感じだ。ところどころ荷物も置かれてるし。




「良いって言ってくれたって聞いたけど。

ほんとにわたしが来ても大丈夫だったの?」



席に向かう途中、トップの彼の真横を通るからと声を掛けてみれば。

彼は「ああ」と返事して、わたしを見上げた。



「教室で何かされたりしなかったか?」



「え? うん。大丈夫だけど」



「なら良い。……嫌がらせとかされたら言えよ」



「されないでしょ。

もしわたしが嫌がらせされるとしたら、あなたたち本当にこの学校の子に好かれてるのね」



仮に何か言われたとしても、されたとしても。

それで折れるようなメンタルだったら、わたしは今ここにいないと思う。



< 88 / 295 >

この作品をシェア

pagetop