【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「いらっしゃい雫ちゃん。
ごめんね、お昼食べるにはちょっと埃っぽいかもしれないけど。一応換気はしてるから」
「ううん、大丈夫よ。ありがとう」
井瀬谷くんにも優しく歓迎されて、思わず笑みを漏らす。
……幹部との接近、こんなに上手くいってて良いのかしら。
しかも今のところ、わたしから動いたことはほとんど無い。
優理が声を掛けてくれたおかげで、事がとんとん拍子に進んでる。
「こっちおいで~」
優理に呼ばれて、その隣の空いた席へと足を向ける。
旧図書室ということもあって、室内にあるのは大きな机とそれを囲む椅子が複数。
ひとつの机で6人は座れるけど、せっかくこの広さがあるんだから、そのスペースを有効活用しているようで。
2台の机で、各々好きなところに座っている感じだ。ところどころ荷物も置かれてるし。
「良いって言ってくれたって聞いたけど。
ほんとにわたしが来ても大丈夫だったの?」
席に向かう途中、トップの彼の真横を通るからと声を掛けてみれば。
彼は「ああ」と返事して、わたしを見上げた。
「教室で何かされたりしなかったか?」
「え? うん。大丈夫だけど」
「なら良い。……嫌がらせとかされたら言えよ」
「されないでしょ。
もしわたしが嫌がらせされるとしたら、あなたたち本当にこの学校の子に好かれてるのね」
仮に何か言われたとしても、されたとしても。
それで折れるようなメンタルだったら、わたしは今ここにいないと思う。