【完】黒蝶 －ふたりの総長に奪われて－

「……まるで他人事だな」



「そう？

あなたたちにそんな迷惑掛けられてないから」



まだ、たかが他人。

何か言いたげな彼が口を開こうとした時、わたしのポケット内で勢いよく震え出すスマホ。……電話？



ポケットからそれを取り出し、画面を確認する。

……あ、違う。ハルちゃんからのメッセージだ。



しかもなぜか大量に。

『なんでえっちゃんには返信してハルには返事くれないの？』という、ハルちゃんはわたしのカノジョ？と思ってしまうようなメッセージから始まって。



『雫ちゃん』『返事してよ』『さみしいよ』『いまお昼休みじゃないの？』『ねえねえ構ってよ』『ハルとは話してくれないの？』『そっちで仲良い女の子でもできたの？』『ハルいらない？』『(；；)』

……うん、寂しがってくれてるのは嬉しいけどちょっと怖い。



このままだとさらに山のようなメッセージが来る気がする。

慌てて『ごめんハルちゃん。彼岸花の幹部と接触してるから忙しくて』とだけ返すと、『そっかぁ…』とメッセージは大人しくなった。




よかった。

ハルちゃんってそんなメンヘラ体質だったっけ？



「なになに？　彼氏～？」



「女の子のスマホを覗いちゃいけません」



バッグを机に置くと同時に、スマホを覗き込んでこようとする優理。

咄嗟に見えないように隠して、ロックをかけた。



……あぶない。

うっかり見られることも想定して、ロックを解除しないと、メッセージの内容は見れないようにしてあるけど。



「うん？　ほんとに彼氏？」



「いないって言わなかったっけ」