【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-







「りょ、りょーくん。怒ってる?」



「別に怒ってないよ?」



「そ、そっかぁ……」



お会計を済ませ、これでもかと中身の詰まったエコバッグを両腕に抱えながら、すこし申し訳なさそうな顔をしている咲ちゃん。

結局デザートを決めきれず、複数買ったらしい。



でもお会計が6000円近くだったのは、それだけが原因じゃないと思うわよ。

稜くんは何も言わずに払ってくれたけど。



「ありがとう稜くん」



お礼を言うと、稜くんは「どういたしまして」と穏やかに返してくれる。

基本的に稜くんはずっと優しい。怒らせさえしなければ。……怒ったとこ、見たことないけど。まつりが、稜くんがキレたらめんどくさいって言ってた。




「あ、」



スマホが、着信を知らせる。

画面を見れば『兄』と表示されていて、それに出ることなくスマホをポケットにしまった。



「出なくていいの? 雫ちゃん」



「うん、お兄ちゃんからの電話だから長いと思う。

夜帰ってから掛け直すことにするわ」



「そっか。

心配されてるかもしれないし、メッセージ送るとか、フォローはしておきなよ?」



「うん、そうするわね」



数回のバイブレーションで、出ないと気づいたのか電話が切れる。

たまり場にもどってきてすぐ、メッセージアプリで『夜掛け直す』と返したら、返信はなかったけれど既読はすぐについた。



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