【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



お弁当を開きながら言えば彼は、満足げに口角を上げる。

面倒なトラブルに巻き込まれて、越に怒られるのはごめんだ。……越が怒ると怖いし。



「もし万が一、そういうトラブルに巻き込まれたって言うなら。

……俺に電話してくれたら、ある程度動けるから」



「あら、親切なのね」



「ん~? そう? そんなことねえよ?」



……そんなことありそうな顔してるわよ、優理。

対価を求めずに相手を助けてくれるなんてこと、早々誰にでもできる芸当じゃないと思う。



「まあ、優理に連絡したら何を代わりに返してって言われるかはさておき。

コイツらが今後も迷惑かけそうな予感がするから、もし万が一困ったら、俺に連絡くれる?」



井瀬谷くんが、離れたところから声を掛けてくる。

……え?いいの? 彼、副総長なんだけど。




わたしが狙ってるトップの、幼なじみ兼次の立場なんだけど。

ぱちぱちと瞬いていたら、机の上のスマホが鳴る。それは隣にいる優理が、ぺぺっと操作してわたしに送ったものらしく。



「あ、りがとう。困ったら連絡させてもらうわ」



『井瀬谷 稜介』と書かれたアカウントが届いてる。

……ゲットしちゃった。副総長の連絡先。



っていうか井瀬谷くんは彼らの保護者なの?

学年集会の件でも、ふたりのこと怒ってたけど。



「すぐりん、ぼくのも雫ちゃんに送ってー」



「ん~?

じゃあもうめんどいから全員送っといていい?」



……え?



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