【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



いやいやいや。え?

わたしは良いけど。……良いんだけれども。



複数回スマホが震えて、『咲耶』『快斗』『舘宮 まつり』と3人分の連絡先が届く。

え、ほんとに大丈夫? 危機感無さすぎじゃない?



「そんな簡単に連絡先渡しちゃっていいの?

ふたりの口ぶりからして、特に舘宮くんの連絡先なんてめちゃくちゃ狙われてるんじゃ……」



「ん~? まあケー番じゃないし良くねえ?

あと、こういうの絶対に嫌なタイプのまつりが何も口挟んでこなかったから、俺もちょっとびっくりしてる」



「嫌ならだめじゃない!?」



「……お前別に悪用する気無さそうだしな」



悪用……は、しないけど。

女の子に無断でばらまくとか、そういうのはしないけど。




ほんとにいいの?

連絡先が手に入ったからいきなりメッセージをめちゃくちゃ送るとか、そういうのもさすがにするつもりは無いけど。



「そもそも俺らに少しでも気がある女が、優理の誘いを断る理由がねえしな。

断り続けてる上に連絡も無視しまくってたんだろ」



「だってめんどくさくて……」



「っちょ、ひどいな雫ちゃん」



わたしの本音に、ケラケラと笑い始める咲ちゃんと八雲くん。

八雲くんに至っては、わざとらしく優理のことを指さしてた。それは可哀想だからやめてあげなさいね。



「……まあ、まつりの連絡先持ってて損は無いよ。

関東南でまつりを敵に回したい男はいないから。それこそ、何か困ったらまつりに連絡するといいよ」



本人こう言ってるし、と。

優しく言ってくれる井瀬谷くんの言葉に頷く。うん、ありがとう井瀬谷パパ。あなたがいないとこのチームは無法地帯な気がするわ。



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