【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「つーか、なんで美高にしたんだよ。
このあたり、あと2箇所ぐらい高校あるだろ」
「だってこの学校、いちばん校則ゆるかったし」
コレはいつまで経っても話してたらお弁当を食べられなさそうだ、と。
悟ってもくもくと食べているわたしに、遠慮なく話しかけてくる八雲くん。この返事ももちろん嘘なんだけど、「そーだな」なんて笑ってる。
「つーことは、
ココ受けた時からその髪の予定だったんだな」
「うん。そのつもりだった」
嘘だけど。
入学直前に、越の助言でただ金髪にしただけなんだけど。まあ辻褄合わせておかないと面倒だし。
八雲くんも中学時代から髪色に関しては怒られまくってきたようで。
「何も言われねーの楽だわ」と言っているけれど、あなたに関してはそれ以外のところで結構怒られてると思う。サボりとかサボりとかサボりとか。
「すげえ綺麗な髪。
こんなロングヘアで色抜いてても傷みねえな~」
ひと足早くご飯を終えたらしい優理が、わたしの髪に梳くように触れる。
距離が近いなと思いながら見つめていたら、その視線に気づいたらしい。
「ん?」
「……距離近くない?」
ぱちぱち。
瞬きして、パッとわたしの髪から手を離す優理。
「あ~うん、そうだねえ。うん。確かに。
ごめん、そんなつもり無かったんだけど」
ちょっとお手洗い、なんて言いながら。
不自然に廊下へ出ていく優理にぽかんとするわたしと、楽しそうに笑ってる八雲くん。