【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



……え? なにこの空気。



「……わたしなんか変なこと言った?」



「いーや? 別に言ってねーよ?

っく、オモロいことになってきてんな」



「……?」



なんだろう。

困って残りの3人に聞こうかと思ったけど、井瀬谷くんが何も言ってこないってことは特に深追いしなくていいのかな。



「ねえねえ、雫ちゃん」



食後になにかデザートっぽいものを食べていたのが、さっきまで遠目に見えていた咲ちゃん。

優理が出ていったことで空いたその席に腰掛け、こてんと首をかしげる。




「雫ちゃん、すきなひといるの?」



「……、え、なに急に」



「彼氏はいないーって言ってたから。

好きな人はいるのかなー、どうなのかなーと思って」



「……いないけど」



いるって言っておいた方がよかったかな。

でもどんな人?ってそこから詮索されても面倒だし。



「そっかぁ。じゃあここからが楽しみだねー」



にこにこ。

屈託のない笑顔のはずなのに、『いいこと思いついたぁ』って時折ハルちゃんが見せる悪い笑みに被って見えるんだけど。……気の所為?



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