【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
みんなが何だかんだ話しかけてくるから、やっとの思いでお昼を食べ終えて。
話をしているうちに、井瀬谷くんのことは稜くん、八雲くんのことは快斗、と呼ぶことになった。
舘宮くんだけは、舘宮くんのままだけど。
その話題の時に彼はずっと黙ったままだったし、帰ってきた優理と別の話題を始めちゃってたし。
「そろそろ5限目始まるわよね。
じゃあわたし教室もどるから。優理ありがとう、呼んでくれて。舘宮くんも、入れてくれてありがとう」
「……ああ。
向こうに居づれぇならこっちで過ごせばいい」
……思ってたより親切だし、話しやすい。
このまま上手くいけば、舘宮くんの彼女になって彼岸花に潜り込むことも、そう難しくなさそうだ。油断はできないけど。
「うんうん。
で、俺も5限出るから、雫ちゃん一緒に教室行こ~」
優理が、わたしと同じように席を立つ。
その場の雰囲気からして、どうやら全員5限目には出る様子だと言うのに。
「ぼくも行……っ、やっぱお手洗い先行く!
雫ちゃん、すぐりんと先行っててー!」
「教室行くなら待ってるけど……?」
「大丈夫だよ、雫ちゃん。
俺もここ施錠するし、優理と先行ってて」
「おー。俺も咲耶とトイレ行ってくるわー」
「……? わかった、先行くわね」
各々すぐには行かなさそうだから、行きましょうかとふたりで旧図書室を出る。
……昨日の今日で、こんなに仲良くなっちゃうとは。
「雫ちゃん、迷子にならないように手繋いどこ」