【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
するっと。
バッグを持っていない手を握られて、思わず隣を見上げる。またこの人は。隙あらば距離を詰めようとしてくるんだから。
「迷子にはならないし、
例えなったとしても手は繋がなくていいのよ」
「ん~そうだねえ」
「じゃあ手離してもらっていい?」
「やだ」
「っ、」
"やだ"って……そんな子どもみたいな。
しかも大人っぽいこの人が言うものだから、迂闊にもキュンときてしまった。あぶないあぶない。落ち着くのよ、雫。
「そうやって女の子に優しくしてるんでしょ?」
「まあ……そうだけど。
いま俺は結構しっかり焦ってるよ。困ったことに」
「焦ってる?」
「そ。……何かは教えないけど」
「……教えてくれないんだ」
そんな風にはっきり言われると、ちょっと落ち込む。
2日でこんなに仲良くなれたことに驚いてるし正直おこがましいけど、そこまでの仲じゃないって言われてるみたいで。
「っ……、何そのかわいい顔、」