【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
さっきまであんなに仲良くなれた気がしていたのに、急に突き放されたような寂しさ。
けれどそう言われてしまったら、「そっか」としか返すことができなくて。
「じゃ、授業頑張って」
ひらひら。
繋いでいた手を離して振った彼は、わざわざ自分の教室を通り過ぎて3組まで送ってくれた。
「ありがとう。優理もね」
「ん。じゃ」
もどっていくその背中に、再び声を掛けることはできない。
彼が1組の前に到着したと同時に、残りのメンバーもどうやら合流したようで。校内に鳴り響くチャイムの音に、わたしも教室へと足を踏み入れた。
席について、先生が来るまでの間にスマホを開く。
新たに追加された4人分の連絡先。
「東山さん、ちょっといい?」
「………」
声を掛けられて、ちらり、顔を上げる。
わたしのナチュラルなメイクとは全然違う、アイラインのしっかりと引かれた瞳。そして綺麗に巻かれたハイトーンの髪。
「放課後時間ある?」
「……大丈夫だけど」
「すこし付き合ってもらえる?
ここに残っといてくれたらいいから」
取り巻きの子がふたり。
……うん。少なくとも、好意的な呼び出しではない。というか、明らかに敵意が見えてるもの。