【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
イヤです、と言いたいところだが、言える状況でもない。
内容も彼岸花のことだと分かりきっているし、肯定すれば彼女たちはすぐに席へともどっていった。
……めんどくさいなぁ。
朝顔の姫であることは関係者以外誰も知らなかったし、今も知られてない。だから越と付き合って、誰かから絡まれるようなことは特になかったんだけど。
「東山さんって。
舘宮くんたちと元から知り合いなの?」
授業が終わり、放課後。
席を離れないわたしと彼女たち。ようやく全員がいなくなったのを見計らって、集まった彼女たちは声を掛けてくる。
「いや、違うけど。
わたしそもそも、彼岸花のこと知らなかったし」
「じゃあなんで仲良くなってんのよ」
それはわたしも知りたい。
なんでこんなすぐ仲良くなれてるんだろう。
「……優理が声掛けてくれたから?」
「っな、」
「最初に声掛けてくれて。
気づいたら仲良くなってた、というか……」
あ、やばい。言い方をミスったかもしれない。
リーダーの子が、明らかに怒りで震えてる。
「学年集会で……
井瀬谷くんが、あんたのこと庇ってた」
「それは優理たちが、」
「違う。
井瀬谷くんは、舘宮くんに庇うように指示されて、あんたのことを庇ってた……!」