◇水嶺のフィラメント◇
◇ 第一章 ◇
[1]降り出した雨 〈A〉
あたしだけが、知っている──。
砂と岩に囲われた我が祖国では、唯一あたしだけが知る音だ。
世界で一番清らかで儚げな韻律。
心奥に染み透るその流麗な響きは、民を生かす源となる。
そう……水の──反響。
寄せては返す白い岸辺に、震える指先を浸す。
絶えることのない水の流れは、あたしを優しく包み込んだ。
ひんやりとしているのに、不思議と感じる温かな想い。
きっと貴方の愛情が注がれているから、なのね。
水面に映る自分の面に、貴方の笑顔が重なった。
だからあたしは枯れたりなどしない。
たとえこの水が、いつの日か尽きようとも──。
砂と岩に囲われた我が祖国では、唯一あたしだけが知る音だ。
世界で一番清らかで儚げな韻律。
心奥に染み透るその流麗な響きは、民を生かす源となる。
そう……水の──反響。
寄せては返す白い岸辺に、震える指先を浸す。
絶えることのない水の流れは、あたしを優しく包み込んだ。
ひんやりとしているのに、不思議と感じる温かな想い。
きっと貴方の愛情が注がれているから、なのね。
水面に映る自分の面に、貴方の笑顔が重なった。
だからあたしは枯れたりなどしない。
たとえこの水が、いつの日か尽きようとも──。
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