◇水嶺のフィラメント◇
壁面と化していた扉が回転し、やがて向こう側が鮮明になった。
こちら側と同じく明度は低い。
扉に比べて一回りほど道幅も天井も広がったが、アンの話した通りしばらくは煉瓦積みの通路が続いているだけに見えた。
先にアンが扉を抜けたが、周りには特に動く物が存在しなかったため、時が止まっていたことも動き出したことも見た目には分からない。
しかしメティアはその身を移した瞬間、ふいに匂いが変わったことに気付いた。
それはふと風が吹き始めた時のような、淀んだ空気が流れ出した匂いに似ていた。
「で? 上階に着いたらドコへ行く? レインの部屋か?」
洞窟内とは違って速足となったアンを追い掛けながら、メティアはその背に問い掛けた。
幸い宮内の誰とも会わずには済んでいるが、あいにくレインの姿も見つからない。
三~四人ほどがやっと並んで歩けるほどの一本道だ。
此処でリムナトの「敵」側とご対面というのは、是非とも願い下げたい出逢いである。
こちら側と同じく明度は低い。
扉に比べて一回りほど道幅も天井も広がったが、アンの話した通りしばらくは煉瓦積みの通路が続いているだけに見えた。
先にアンが扉を抜けたが、周りには特に動く物が存在しなかったため、時が止まっていたことも動き出したことも見た目には分からない。
しかしメティアはその身を移した瞬間、ふいに匂いが変わったことに気付いた。
それはふと風が吹き始めた時のような、淀んだ空気が流れ出した匂いに似ていた。
「で? 上階に着いたらドコへ行く? レインの部屋か?」
洞窟内とは違って速足となったアンを追い掛けながら、メティアはその背に問い掛けた。
幸い宮内の誰とも会わずには済んでいるが、あいにくレインの姿も見つからない。
三~四人ほどがやっと並んで歩けるほどの一本道だ。
此処でリムナトの「敵」側とご対面というのは、是非とも願い下げたい出逢いである。