◇水嶺のフィラメント◇
「ほら見ろ、あたいの言った通りだったろ!?」

 メティアの誇らしげな耳打ちと目配せに、アンも安堵の微笑と頷きを返す。

「ね、イシュケル……貴方こそどうしてこんな所に?」

 そうして二人は後を追いかけながら、アンは彼の後ろ姿に問い掛けた。

 三人が進む道は地下道から上がってきた通路と似て、長く続く奥までは暗くて見通せない。

「レインさまはじめ政府保守派の皆さまは、こちらの地下室で話し合いを進めております。わたくしも参加していたのですが、皆さま喉が渇いたと仰いましたもので……隣の通路の貯蔵庫に」

「取りに行こうとしていたのね。ごめんなさい、行けずに帰らせてしまったわね」

「いえ、お二人をお連れしましたら、また戻れますので」

 振り向くことなく淡々と答える長身に、メティアは「愛想がないわね」と言わんばかりに肩をすくめてみせた。


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