◇水嶺のフィラメント◇
 一方フォルテたち一行は支度を整え、北検問所へ向けて再び出発した。

 しかしその途端進み出した前方から、「ホゥ、ホゥ」と鳴き声が二度、思わず全員の足が止まる。

「何だ……フクロウか?」

 そう思いつつも先頭の兵士が剣の(つか)に手を掛けたのは、どことなくフクロウらしからぬわざとらしさがあったからだ。

「あ、あのっ、リーフです! ボクの仲間です!!」

 列の真中から嬉しそうな声が上がり、兵士たちの警戒は止められた。

 パニは侍従から灯具を借りると、一番がたいの良い兵士に肩車をお願いした。

 担がれて高さを得た空間一杯に腕を広げ、右手に握った灯具を勢い良く振り回して、同じく「ホゥ、ホゥ」と鳴き返す。

 パニの方がずっとフクロウらしい鳴き声だ。

 応えるようにもう一度似非(えせ)フクロウの声まねが聞こえ、パニは元気良く飛び降りて、一同に笑顔で頷いた。

 やがて合図のあった方角からガサガサと繁みを掻き分ける音が近付く。

 暗闇から現れた青年はパニと同じくスラリとしているが、頭二つ分ほど背が高い。

 太ももに巻かれたホルスターには銀色の拳銃が鈍く光る。

 尖ったように重力に逆らう髪は、光の加減か淡いグリーンに見えた。


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