◇水嶺のフィラメント◇
「相変わらずフクロウの鳴きまねがヘタだね、リーフ」

「それを言ってくれるなーって! んなことよりパニ、意外に女装が似合うんじゃねーか!?」

 パニのダメ出しには気を留めず、フィンガーレスの革手袋に覆われた右手をこめかみで一振り、リーフは気障なウィンクをしてみせた。

「それも言ってくれなくていいから……それよりメーが王女さまと一緒に消えちゃって……多分リムナト王宮に向かったのだと思うのだけど……」

「ああっ!? 何だソレ! そんな計画聞いてないぞ? メーが王女を連れ去ったのか!?」

 リーフの驚きに、全員が首を横振りしながらも深い溜息をつく。

 その光景を呆然と見詰めて、リーフも困惑するように後頭部を掻き回した。

「ううん、アンさま直筆の置き手紙があったから、きっとアンさまのご意志なのだと思う。だから二人の兵隊さんに王宮へ戻ってもらったんだけど……ボクたちはとりあえず予定通り行動することにしたんだ」

「うはぁ~」

 「掻き回す」手が「掻き乱し」始めて、リーフは小さく「メーの奴、しくじったりしてねぇだろうな?」と呟いた。

 が、そんなボヤキも気持ちを切り替える良いキッカケにしながら大きく息を吐き出す。

 「まったく、しょうがねぇなー」とでも言いたそうな表情で全員の不安顔を見渡し、一案持ちかけた。


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