◇水嶺のフィラメント◇

[12]月下の標的

 ──そして十分後。

「リーフ、一体どうやって……?」

 既にルーポワ側の小道をゆく一行の中、パニはリーフに耳打ちした。

 周囲に聞こえないよう配慮したのは、リーフの使った越境の「手口」が、どうせ正統なやり方ではないと推察出来たからだ。

 そんなパニの勘繰りに気付いたのだろう、リーフも小声で白状した。

「……実はさ、検問所の監視の一人はオレの幼なじみなんだ。あいつ、メーの根っからのファンでさ! ……メーの下着くすねてきてやったら、何でも言うこと聞くって前からの約束だった」

「えぇ……?」

 自慢気なリーフの種明かしに、パニは横目を寄せつつ閉口する。

 確かにリーフが監視員の一人とやり取りをした後、必ず二人以上が常駐する検問所から一人が消え、リーフと話した職員が何のチェックもすることなく一行を通してくれたのは事実だ。


< 126 / 217 >

この作品をシェア

pagetop