◇水嶺のフィラメント◇
 全員揃っていることを確認したリーフは、無言で頷いて入口に足を踏み入れた。

 ランプの灯りが徐々に遠ざかってゆく。

 その光を頼りに、一行は細く長い坑道を進んでいった。

 人の手で掘られたと思われる洞穴内は、幾つもの横坑や竪坑が入り組んでおり、湿気を帯びてひんやりとしていた。

 「森の国」と呼ばれるだけあって、樹木が化石となって出来る石炭の採掘が盛んに行われた時期もあるという。

 しかしそれもやがて採り尽くされ、この坑道も既に忘れ去られた遺跡と化した。

 腰を曲げながらの歩みは辛く、十五分は掛かってしまっただろうか。

 限られた空間の暗さとは違う淡い紺色の視界がようやく現れて、皆の表情にも明るさが(よみがえ)った。

 坑道の切れ目から飛び出すと、全員が思いきり背筋を伸ばして深く息を吸う。

 三灯のランプ以外には上空に大きな半月が輝くだけだが、ぼんやりと漂う闇の中に、切り立った山並みに貼りついたような細い崖路(ほきじ)が伸びて見えた。

「あの道をひたっすら進めば、いつかナフィルの北町へ辿り着けるぜ。んじゃあオレはリムナト王宮へ向かうから。パニ、フォルテさんのお世話は頼んだぞ!」

「うん! リーフも王女さまとメーを宜しく!」

 それぞれがリーフにお礼を言いながら、一列になって狭路へ向きを変える。


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