◇水嶺のフィラメント◇
 が、まだ厚みのない少年の胸に、再び泣き出したフォルテが抱きついた。

「……心配掛けてごめんなさい、フォルテさん」

「いいえっ! いいえ……」

 胸に押し当てた耳が、パニの鼓動をハッキリと確認する。

 服の上からでも伝わるぬくもりが、生きていることを証明する。

 そしてフォルテの愛情に応えるように、パニはその髪を優しく撫でてやった。

「よっしゃ~! これで正式に全員無事ってことでOKだな! んじゃあ今度こそオレは王宮へ行くから。パニは……」

「……ボクも行きたい! どうして王女さまでなくボクが狙われたのか、誰がボクを狙ったのか……知りたいんだ。ごめんなさい、フォルテさん。ボク……」

「謝らないで、パニ。わたくしたちはもう大丈夫よ。どうか……姫さまのことを宜しくお願いします」

「……はい!」

 差し出されたリーフの手に手を取り、パニは勢い良く立ち上がった。

 釣られるように目の前に立ったフォルテと瞳を合わせ、真摯な表情で約束を交わす。

 ──王宮に戻れば、敵の正体も襲われた理由もきっと分かる。そしてアンさまも──この手で必ず守ってみせる!

 リーフとパニは一行に手を振って、坑道へ向かって駆け出した。

 二人の雄姿を見守るフォルテたちの(おもて)には、信頼を表す微笑みが刻まれていた──。



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