◇水嶺のフィラメント◇
[15]禁忌の記憶
「やめてくれ……ネビア!」
レインの声は胸下の痛みからではなく、ただひたすらに希うその想いから打ち震えていた。
「やめるワケなどないだろう? お前の所為でどれだけ俺が嫌な想いをしてきたと思ってるんだ!? これでやっとお前に屈辱を与えられる。愛するお姫サマをお前の前で辱められるなんて……くくっ、こんなに官能的なことはないよなぁ?」
「悪趣味この上ないって! ……反吐が出るっ」
メティアは嫌悪を剥き出しに吠え、目の前の床に唾を吐き出した。
が、その首に剣を突きつける男が「黙れ!」と恫喝し、彼女の脇腹をしたたか蹴り上げた。
「メティア!」
「おいおい、他人の心配なんてしている場合かい、お姫サマ? それよりこれってフランベルジェの衣装だろう? 本来あんたはその女に連れられて、南方からナフィルへ戻る計画だったってわけだ。その途中ででも捕まえて此処まで引っ張ってくる手筈だったが、自らノコノコとやって来てくれたお陰で随分と手間が省けたよ。全てのタイミングが俺に協力してくれた! おやじがまもなくの王位継承のために、ナフィル兵が謀反を起こしたなんていうくだらないデマを流してくれたのも、イシュケルを遣ってレインをおびき出してくれたのも……そうそう~元々おやじはあんたを拘束したかったのに、レインが引っ掛かったのは傑作だったね! 俺にとっては好都合だったけれども。尚更おやじには感謝しなくちゃいけないなぁ」
レインの声は胸下の痛みからではなく、ただひたすらに希うその想いから打ち震えていた。
「やめるワケなどないだろう? お前の所為でどれだけ俺が嫌な想いをしてきたと思ってるんだ!? これでやっとお前に屈辱を与えられる。愛するお姫サマをお前の前で辱められるなんて……くくっ、こんなに官能的なことはないよなぁ?」
「悪趣味この上ないって! ……反吐が出るっ」
メティアは嫌悪を剥き出しに吠え、目の前の床に唾を吐き出した。
が、その首に剣を突きつける男が「黙れ!」と恫喝し、彼女の脇腹をしたたか蹴り上げた。
「メティア!」
「おいおい、他人の心配なんてしている場合かい、お姫サマ? それよりこれってフランベルジェの衣装だろう? 本来あんたはその女に連れられて、南方からナフィルへ戻る計画だったってわけだ。その途中ででも捕まえて此処まで引っ張ってくる手筈だったが、自らノコノコとやって来てくれたお陰で随分と手間が省けたよ。全てのタイミングが俺に協力してくれた! おやじがまもなくの王位継承のために、ナフィル兵が謀反を起こしたなんていうくだらないデマを流してくれたのも、イシュケルを遣ってレインをおびき出してくれたのも……そうそう~元々おやじはあんたを拘束したかったのに、レインが引っ掛かったのは傑作だったね! 俺にとっては好都合だったけれども。尚更おやじには感謝しなくちゃいけないなぁ」