◇水嶺のフィラメント◇
 地下道の分かれ道を右へと進み、やがて一行は目的地に辿り着いた。

 城の東部に隠された不思議な空間は、岩に囲われていながらほんのり明るかった。

 左手半分は澄んだ水を湛えていて、右半分には真っ白で細かな砂が敷き詰められている。

 しかし見通せる奥までのちょうど中間に、まるで牢獄のような鉄格子が天井まで貫かれていた。

 それは端から端までずっと巡らされていて、見れば水の底までも深く刺し込まれているようだった。

「ココが……アンとレインが出逢った場所、なのか?」

 ぐるりと見渡しながら『はじまりの物語』に想いを馳せるメティアの感嘆は、劇場のように弧を描く岩の天井によって拡散された。

「そう……もちろんいつものあたしはあちら側にいたのだけれど。ありがとう、みんな。どうかレインを岸辺に寝かせてあげてください」

 六人は目の前の泉に進み、アンの願いどおりにレインを砂の上に優しく降ろした。

 怪我をしている胸元から足先までを()からせて、その傍らにアンも腰を下ろした。

「ごめんなさい。レインが目覚めるまで、待っていていただけますか?」

 一同は言葉もなく、深く(こうべ)を垂れて承諾する。

 やって来た入り口に近い岩壁まで下がり、遠くから二人を見守るように一列に並んでしゃがみ込んだ。


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