◇水嶺のフィラメント◇
[17]天使の恋、決断の時
「何を……言っているの……?」
しばらくの間アンはもちろんのこと全員が言葉を失ったが、沈黙した空間は震えるアンの声によって再び音を取り戻した。
「僕は……もう君を守ってあげられない。だけど、この泉に、身を沈めれば……」
「守ってなんて! いいの……あたしのことなんて……だからお願いっ、この泉は傷を癒してくれるのでしょ? あたしはどうしたらいいの? 何をしたらいいの? 教えて……貴方の怪我が治るなら、あたしはっ──」
「アン……」
アンの必死な問いかけは、レインの眼差しと交差した途端に継げなくなった。
いつも以上に優しい瞳。
レインはその視線を外さぬまま、もう一度メティアに話しかけた。
「メティア、君は気付いてるんだろ? 僕の身体に触れたのだから。折れた肋骨が、内臓を傷つけてしまった……幸い肺には刺さらなかったから、呼吸も会話も出来ているけれど……骨は今でも刺さったままだ。……アン、泉の力で、傷はいつか癒えると思うよ。でも刺さった骨は……戻らない。骨の刺さった部分は、治らない……だからこのまま死を待つのなら、僕は最善の道を選びたいんだ……」
「あっ……」
アンは真正面のメティアを見上げた。
同じくアンに目を向けるメティアの表情は頑なだった。
それはレインの告げた状態が、真実であることを意味していた。
しばらくの間アンはもちろんのこと全員が言葉を失ったが、沈黙した空間は震えるアンの声によって再び音を取り戻した。
「僕は……もう君を守ってあげられない。だけど、この泉に、身を沈めれば……」
「守ってなんて! いいの……あたしのことなんて……だからお願いっ、この泉は傷を癒してくれるのでしょ? あたしはどうしたらいいの? 何をしたらいいの? 教えて……貴方の怪我が治るなら、あたしはっ──」
「アン……」
アンの必死な問いかけは、レインの眼差しと交差した途端に継げなくなった。
いつも以上に優しい瞳。
レインはその視線を外さぬまま、もう一度メティアに話しかけた。
「メティア、君は気付いてるんだろ? 僕の身体に触れたのだから。折れた肋骨が、内臓を傷つけてしまった……幸い肺には刺さらなかったから、呼吸も会話も出来ているけれど……骨は今でも刺さったままだ。……アン、泉の力で、傷はいつか癒えると思うよ。でも刺さった骨は……戻らない。骨の刺さった部分は、治らない……だからこのまま死を待つのなら、僕は最善の道を選びたいんだ……」
「あっ……」
アンは真正面のメティアを見上げた。
同じくアンに目を向けるメティアの表情は頑なだった。
それはレインの告げた状態が、真実であることを意味していた。