◇水嶺のフィラメント◇

[18]古(カコ)の過(あやま)ち、未来の夢 〈S〉

首長(リーダー)……?」

「スウルム……」

 メティアとイシュケルの声が重なった。

 そう呟いた二人と遠くの影を何度も見返して、困惑を隠せずいたのはアンと……そして息子であるパニであった。

「と、うさん……なの?」

「あの方が……叔父さま」

 アンを包み込むメティアの腕に力が込められる。

 アンはその誘導に身を委ねて、ようやく岸辺に上がった。

「我が息子……パニ。大きくなったな……立派になった」



 皆の集まる砂地に近寄った影は、見つけた自分の半身(パニ)に想いを込めた言葉を掛けた。

 しかしパニを感慨に浸らせる余裕もなく、その隣で険しさを(かも)し出すイシュケルの足元に(ひざまず)いた。

「イシュケルさま……これまでのご無礼、お許しくださいとは申しません。ただ貴方のご息女を無断で連れ去りましたこと、深く深く……お詫び申し上げます」

「……」

 イシュケルは無言のまま、眼下に身を縮めたスウルムに視線を落とした。

 その両拳はきつく握られ怒りを露わにしていたが、それを振るうつもりはないように思われた。

「……娘が元気でいるのならばもういい。しかし理由は聞かせてもらおう」


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