◇水嶺のフィラメント◇
「だがその秘密を知った幾ばくかの民が欲を掻き、この地を占拠して王になろうと押し寄せた……神は怒り、国の南フランベルジェの火山を噴火させ、この地上に膨大な岩石を降らせて国を二つに分断した。それがリムナトとナフィルの二国に分かれた始まりだ。その時同じくリムナト西部も甚大な災害を(こうむ)ったが、こちらは対照的に高き峰が(えぐ)り取られる結果となった。そしてこの洞窟は……泉の中央に鉄格子が巡らされ、東西どちらの入り口からも泉の向こうへ通ることは叶わなくなってしまったそうだ」

 この騒動がネビアの話した『神の怒り』であろう。

 文献は残存せず、王家の一部に口伝(くでん)されると言っていたから、それが何処からか洩れ伝わってしまったのかも知れない。

 しかし──今。

 レインが身を沈めた途端、数本でも鉄格子が外され道が開かれたのは──神の怒りが解かれた、ということであろうか?


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