◇水嶺のフィラメント◇
「違うの。レインがこの(みち)を選んだのよ」

 アンがそのように割り切っても、メティアはどうにも割り切れずにいた。

 愛する者を遺して逝く覚悟などどうして出来ようか?

 それほどレインがアンを愛していたとは分かっていても、到底理解の出来ることではない。

「大丈夫よ。あたしが信じている限り、レインにはまた会えるから」

「え……?」

 驚いて上げた涙の溢れ出す瞳に、ニッコリとしたアンの笑顔が映り込む。

 その雰囲気は何度も見たレインの微笑みにとても似ていた。

「パニ、来て」

 アンはメティアの頬を優しく(ぬぐ)って解き放ち、今度はリーフの横で心配そうに見詰めるパニを呼んだ。

「アンさま……」

 こんな時、自分はどのようにして王女を慰めることが出来るのか?

 パニはどんな顔をしたら良いのかもまだ分からない状態だった。

「パニも何も気にしないで。それより貴方が従弟だったと知って、とっても嬉しいの」

「は、はい! ボクもです! アンさまと従姉弟だなんて、本当に光栄です」

「ありがとう、パニ」


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