◇水嶺のフィラメント◇
「第一班には兵士三名を合わせて計七人、第二班はアンと、残りの兵士を二人。それとこれから風の民の副首長(サブ・リーダー)が合流してくれるので、こちらはその四名で動いてもらおうと思う。アンの存在を知られないためにも、人数は最低限にしておきたいのでね。少ない方が何かと身軽でもあるだろうし? 一班にはルーポワ側の北検問所から抜けて尾根伝いで、二班はフランベルジェの南検問所に近い抜け道から、裾野伝いでナフィルに戻ってもらう。……此処までは大丈夫かな?」

 話が進むにつれ、場の空気がピンと張り詰めていった。が、ひとまず概要が話されて、アンと侍従二人にはすぐに疑問が浮かび上がった。

 潜伏中の近衛兵は全員で六名だ。なのにパニ側に三名・アン側に二名、レインの計画には一人だけが欠けていた。

「レインさまが会われた近衛兵は五名だったのでしょうか……?」

 恐る恐る切り出した侍従の一人に、レインはゆっくりと視線を向けた。

「いや、六名だよ。近衛隊長のイシュケルのみ、僕のところに残す算段だ。叔父たち革新(リベラル)派との話し合いに、見届け人として立ち会ってもらう手筈でね。最も分別のある名士が同行出来ないとなれば、君たちには心細いと思うけれど……彼が適任であると判断した」


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