◇水嶺のフィラメント◇
[4]燻(くすぶ)り出した炎
「もうっ、レインの意地悪! どうして訂正してくれなかったの!?」
レインが到着した朝と同様、フォルテの階段を駆け上がる音が響いて。
アンはやっと自分の過ちを知った。
中性的な顔立ちの上に、まだ声変わりもしていないのだ。言われなければ少女と勘違いしてしまうのも仕方あるまい。
速攻パニには謝罪を入れたが、もちろん「彼」は気にしてなどいない。
その分気持ちの収まりどころが見つからなかったのか、アンの追及はレインに向けられた。
「ゴメン、ごめん! アンが「少女」と言っても、パニが正さなかったからさ。それに……少女といえども女性を連れてきたら、少しはヤキモチ焼いてる顔を拝めるかと思って?」
フォルテのように頬を膨らませて怒るアンも、レインのおどけたウィンクにはつい調子が狂ってしまう。
その一瞬の隙をついて、レインはアンをつと抱き締めた。
「ヤキモチなんて……焼かないわ」
「そ? それはちょっと残念」
既に帰還計画はまとめられて、侍従もフォルテもパニも階下に待機していた。
レインが現れた時と同様に、その背に腕を回したアンは、
「だって、ちゃんと信じているから」
上気しそうな頬を、レインの肩先にそっと押し当てた。
「うん。ありがとう、アン」
彼女の言葉に満足したように、柔らかく口角を上げるレイン。熱い口づけを何度となく交わし、おもむろにアンを解き放した。
「ごめん、そろそろ行かなくちゃいけない」
「そ……よね」
レインが到着した朝と同様、フォルテの階段を駆け上がる音が響いて。
アンはやっと自分の過ちを知った。
中性的な顔立ちの上に、まだ声変わりもしていないのだ。言われなければ少女と勘違いしてしまうのも仕方あるまい。
速攻パニには謝罪を入れたが、もちろん「彼」は気にしてなどいない。
その分気持ちの収まりどころが見つからなかったのか、アンの追及はレインに向けられた。
「ゴメン、ごめん! アンが「少女」と言っても、パニが正さなかったからさ。それに……少女といえども女性を連れてきたら、少しはヤキモチ焼いてる顔を拝めるかと思って?」
フォルテのように頬を膨らませて怒るアンも、レインのおどけたウィンクにはつい調子が狂ってしまう。
その一瞬の隙をついて、レインはアンをつと抱き締めた。
「ヤキモチなんて……焼かないわ」
「そ? それはちょっと残念」
既に帰還計画はまとめられて、侍従もフォルテもパニも階下に待機していた。
レインが現れた時と同様に、その背に腕を回したアンは、
「だって、ちゃんと信じているから」
上気しそうな頬を、レインの肩先にそっと押し当てた。
「うん。ありがとう、アン」
彼女の言葉に満足したように、柔らかく口角を上げるレイン。熱い口づけを何度となく交わし、おもむろにアンを解き放した。
「ごめん、そろそろ行かなくちゃいけない」
「そ……よね」